理事長挨拶

2018年3月22日

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一般社団法人日本衛生学会 理事長
川崎医科大学衛生学 教授
大槻 剛巳

凝視(みつ)めれば、愛

 

2017年夏に、日本衛生学会は一般社団法人となり、『日本医学会の一部会として明治35年(1902年)「衛生学・細菌学・伝染病学」との連合の形として始まり、その後、昭和4年(1929年)に始まった 日本聯合衛生学会をもって第1回と規定し、昭和24年(1949年)より日本衛生学会と名称を変え、現在に至って(沿革より抜粋)』きた流れの中で、新たな時代を迎えました。その間、環境・人・社会における健康問題を学術研究の対象として、栄養の問題、公害に代表される環境からもたらされた健康被害の種々の問題、さらに疫学的手法や実験研究を基盤としながら、生活習慣から地球あるいは宇宙環境に至るまでの幅広い領域を、原子や遺伝子レベルから、個としての人さらにその集団というこれもミクロからマクロまでの観点から検討を加えて、人々の健康に向き合うこと維持継続してきました。

 

学会としての活動としては、学術総会と機関誌発刊が2つの主軸となります。

 

学術総会については、少し改革を加えて、対象とするマテリアルやメソッドが異なっていても、環境医学・予防医学としての共通するコンセプトの中で、それぞれの研究領域をじっくりと検討できるような総会への脱皮を目指してみたいと考えております。総会の会場での熱き議論から会員相互の交流と学術の発展が得られ、次代につながる広く深い研究領域の拡充が生まれるであろうこと、それによって我々の向き合っている領域に、更に多くの研究者が参集され、さらに継続して活動されることを願ってのことです。

 

機関誌については、英文誌EHPMがmedline搭載、Impact factorの取得の後に、2017年初頭からopen access誌となりました。益々アクセスし易くなり国際発信力も増強されるだろうと期待しております。国際発信力強化については、研究成果公開促進費の助成も受け、更に活性化を図りたいと考えております。また、和文誌「日本衛生学雑誌」については、J-STAGEを用いたopen access となっていますが、一度、雑誌の位置付けに合致した編集・出版作業に取り組みたいと思っています。

 

専門職および専門医について、前の理事会体制の中で検討の上、準備を進めてきました。特に専門医については、社会医学系専門医協会の社員として活動し、2017年4月から協会としての制度の開始が実施され、本学会としてもその準備段階から深く関与し、今後も推進力を発揮していきたいと思っております。同時に、環境医学・予防医学の研究に携わる多くの研究者が、専門職として、社会や一般市民の方々に認知されることは、リスク・コミュニケーションや情報発信の場においても重要なことになります。その構築と社会医学系専門医制度との整合性を調整しながら、良い形で、社会に対して本学会の意義と責任を明確にしていきたいと考えております。

 

その他、国際化、会員増への方策、経費的にも余裕の持てる学会運営、社会医学系の他学会との協調など考えていかなければならないことは山積しておりますが、会員、評議会員、代議員、理事の皆様とともに、少しでも良い方向に進めるように、心も体も開いてご意見を聞かせていただきながら、邁進したいと思っております。

 

さて、2014年に私は学術総会の会長を務めさせて頂きましたが、その時のテーマをテーマとして「凝視(みつ)めれば,愛」とさせていただきました。それは『衛生学というのは,文字通り「生を衛る」学術領域ということですが,対象領域によって人間や環境や,健康などを取り扱っております。そして,世の中の人々が健康の障害なく天寿を全うするようにと願う学問領域でもあろうと考えております。これらの根幹にあるものは,それは「愛」でしょう。環境への,健康への,そしてすべての人々への「愛」あればこそ「生を衛る」学問が成就していくのだと思っております。改めて,会員の皆様,ご参加の皆様と「愛」を「凝視(みつ)める」ことで,衛生学の学術の発展に寄与貢献できれば,という願いを込めてみました。』ということでした。理事長就任にあたって、もう一度この言葉を掲げさせて頂こうと思っております。

 

人を愛する想いあればこそのメディカル・サイエンスであり、健康への賛辞を我々の成果から世界の人々に届けていきたいと思います。

 

非公式日本衛生学会主題歌(YouTube)

 未来に向かって-日本衛生学会

 衛る生命-JSH-