沿革~衛生学の始まり
日本で初めて「衛生」という言葉を用いたのは、長與專齋(1838~1902年)です。長與專齋は、1854(安政元)年から緒方洪庵の適塾で学び、後に塾頭になりました。1871(明治4)年、岩倉使節団に加わり欧米諸国を視察した時に、「清潔」「健康」を表わす言葉として“sanitary”が使われているのに気が付きました。当時、日本には“sanitary”に対応する言葉がありませんでしたが、荘子の書の中で「衛生」という言葉が「生命を衛る」「生活を衛る」意味で使われているのを発見し、“sanitary”に対応する言葉として「衛生」が用いられることになりました。1875年(明治8年)、文部省医務局が内務省に移管されると、長與專齋は医務局を「衛生局」に改称し、初代衛生局長に就任しました。(『松香私志より』)
このように、日本の予防医学、社会医学は「衛生学」から始まりました。当時、国民病であった「脚気」にまつわる論争を経て、1902(明治35)年には、「衛生学」「細菌学」「伝染病学」が連合し、日本医学会の一部会となりました。1929(昭和4)年には「日本聯合衛生学会」が発足し、1930(昭和5)年に日本医学会の分科会となりました。その後、1949(昭和24)年に現在の「日本衛生学会」と改名されました。
2020年3月27日
第17代理事長 柳澤 裕之
東京帝国大学 医学部 衛生学
第二代教授 横手千代之助先生 押印