第87回日本衛生学会学術総会

会長挨拶

 第87回日本衛生学会学術集会開催にあたり一言ご挨拶いたします。

 さてこの度、第87回日本衛生学会学術総会を平成29年3月26日(日)から28日(火)の3日間、宮崎県シーガイヤ・コンベンションセンターで開催させて頂くことになりました。会員の皆様には心より感謝申し上げます。日本衛生学会学術総会は今回で87回となります。九州での開催は6回目ですが、宮崎県での開催は初めてです。由緒ある本学会を開催させて頂くことは非常に名誉なことであり、身の引き締まる思いです。皆様のご協力よろしくお願いいたします。

 本学会では「生に宿る知の創造と創生」をメインテーマとして学会を開催いたします。少子高齢化が進む地方都市においては、地域産業の衰退および雇用の減少が問題であり、地域振興および地域創生が重要な課題です。宮崎県もその例に漏れず、年々人口が減少し、地域経済の衰退も危惧され、地域を創生することはますます重要な課題となっています。

 そのため教育機関である大学では、グローバルに活躍できる人材育成を強く望まれると同時に、地域に根付く人材を輩出することを目指すことも必要とされています。この一見矛盾する命題にどのように対処すべきか、自治体、教育機関および企業は種々の対策を講じています。その一環として多くの大学では海外研修を含む教育がなされています。宮崎大学は「世界を視野に地域から始めよう」をスローガンとして、海外研究に力をいれ、海外教育機関と連携協定を結び、多くの学生を海外研修に送り出しています。しかしこのように海外研修を経験させることで、学生の目が外に向けば、地域への就職は自ずと少なくなり、就職する学生が少なければ、経済はさらに衰退し、学生を満足させる就職先は先細りとなってしまい、さらに地域に残る学生は少なくなるという悪循環に陥ることも考えられます。このような状況から多くの地方都市は、少子、高齢化以上の人口減少にさらされることとなったわけです。このままでは地方都市は非可逆的に変化し、戻ることのできない衰退へ向かってしまうことも非現実的な話ではないように思えます。

 本学会ではメインシンポジウム「地域貢献への知の役割」を開催し、宮崎県知事をはじめ、宮崎県下のリーダーにお集まりいただき、地方都市が不可逆的な衰退へ向かわず、地域創生を具現化するために、教育がどのように貢献し、地域浮揚に繋げられるか御討論頂く予定です。宮崎県の状況も他の地方都市と同じ状況であることを考えれば、会員の皆様には必ずや参考となる討論となると考えておりますのでご期待頂きたいと思います。

 日本衛生学会の目的は人々の生を衛ることです。生を衛ることはひいては地域創生、創造につながることでもあります。今回の学術総会の講演を通して、多くの発表、新たな知見が示され、地域に生きる人々を守り、地域創生、創造を成し遂げるヒントが示されれば本懐です。多くの発表を期待しております。

 宮崎県は交通の便が悪く、最近やっと東九州自動車道が全線開通し、福岡市まで高速道路が開通したばかりです。電車にしても、航空機にしても便利であるとは言えませんが、開催時期の気候は温暖で、各種スポーツの春期キャンプが開催される時期でもあります。この機会に多くの会員の皆様に是非宮崎においでいただき、宮崎の温暖な気候を楽しんで頂くとともに、地産品をご賞味いただければこの上のない喜びです。多くの会員の皆様のご参加を心よりお待ちしております。

第87回会長
黒田 嘉紀
宮崎大学医学部社会医学講座公衆衛生学分野